世界6位の錦織圭(26=日清食品)が、全仏通算10勝目を挙げた。同40位のクズネツォフ(ロシア)に6-3、6-3、6-3でストレート勝ち。2年連続の3回戦進出を決めた。次戦は同52位のベルダスコ(スペイン)と対戦する。

 見事な修正能力だった。第1セット第5ゲーム目にして、早めに展開を変えた。相手の得意な直線的な球での打ち合いを避け、少し引いて緩急を交えた。「男としてはつらい判断だったけど、下がってテンポを変えた」。真っ向勝負で打ち勝ちたい気持ちを抑え、勝敗にこだわった。

 滑り出しの第3ゲーム、自分のサービスゲームを落とした。1-3とリードされて「これではいけないと気が付いた」。山なりの回転を利いた球で相手を押し込み、ミスを誘い出した。そこから5ゲームを連取し、鮮やかな逆転。ストレートで6年前に敗れた雪辱を遂げた。

 10年6月に行われたウィンブルドンの前哨戦、エイゴン国際1回戦で対戦。錦織は第2セットの途中で棄権した。09年に右肘の手術を受け、10年4月に本格復帰したばかり。世界ランクも204位で相手も272位だったが、体が持たず棄権した。それから6年、完全に力の差は逆転した。

 1回戦に勝ち、4大大会通算50勝目を挙げた。ただ世界歴代最多がフェデラーの302勝だけに、感想を求められても「あんまりないですね」と苦笑い。錦織の目はもっと先を見ている。もちろん、この日の全仏10勝目にも同じ反応だろう。ただの通過点に過ぎない。

 3回戦は難敵、52位のベルダスコが待ち受ける。過去の対戦は1勝2敗と負け越している。「クレーでは本当にタフな相手」。相手はツアー7勝のうち5勝が赤土だ。錦織の1勝も昨年3月の米インディアンウェルズで、てこずりながらもフルセットで勝ったものだ。

 しかし、退治の方法は分かっている。「より速い(展開の)スタイルに持って行きたい」。自身最高の4強入りで、佐藤次郎(故人)が持つ日本男子全仏通算最多13勝に並ぶ。まだまだ3回戦は序の口だ。【吉松忠弘】