全日本選手権王者の宇野昌磨(19)が自身初の100点超えをマークし、100・28点で羽生を上回る2位で発進した。会心の出来で大きな目はいつも以上にパッチリ。そのまま四方の観衆に笑顔で頭を下げ「なかなか超えられそうで、超えられないのが多かった。3桁はうれしい」と4人目の偉業をかみしめた。

 緊張は「プーさん」でほぐれた。氷上に足を踏みだすと、そこはかわいいぬいぐるみでいっぱい。直前で滑った羽生をねぎらい、観衆から投げ入れられた贈り物を避けながら体を温めた。「無駄に考える時間がなくて、いい意味で気が散った」。2年前は5位、昨年4位の「鬼門」を忘れ、冒頭の4回転フリップで踏ん張る。続く4回転-3回転の連続トーループを成功させると、流れに乗った。滑り終えると「あ、終わった…」。練習と変わらぬ自然体だった。

 昨年末の全日本選手権は、4連覇中だった羽生が欠場する中で初優勝した。そこから米シカゴへ飛び、カナダ・トロントと合わせて2週間超の合宿を行った。「本当は寝正月をしたい」という気持ちを抑え、フリーをすべて4回転ジャンプで通すなど体を酷使。おごることはなかった。昨季のシニア転向後、羽生をSPで上回るのは5度目にして初めて。それでも点数を確認し「もっといい演技ができる」と次のステージへ目を向けた。フリーでは、自身3つ目の4回転ジャンプとなるループに挑む予定だ。逆転での初優勝を視界に捉えても、宇野は前へ攻め続ける。

 ▼男子フリー滑走順 SP2位の宇野が最終グループの22番、3位の羽生が23番、11位の田中は1つ前のグループで13番。首位のチェンは最終24番。