フィギュアスケートのソチ五輪金メダリスト羽生結弦(20=ANA)が、来年3月の世界選手権(中国・上海)で国際スケート連盟(ISU)公認大会初の「300点超え」に挑む。グランプリ(GP)ファイナル(スペイン・バルセロナ)で日本人初の2連覇を達成した羽生は16日、成田空港に帰国した。出迎えた大勢のファンに笑顔で金メダルを披露した。今月26日開幕の全日本選手権(長野・ビッグハット)では後半の4回転を封印し、世界選手権で限界に挑戦する。

 「ユヅく~ん、おめでとう」。成田空港に駆けつけたファン約200人の大歓声に迎えられた羽生は、首からかけたGPファイナルの金メダルを右手に持ち、優しげな笑顔で左手を振った。だが、スケートの話になると表情は一変、笑顔はなし。今月7日に20歳を迎えたばかりとは思えない冷静な口調で、言葉を選びながら、明確な計画を明かした。

 演技構成の難度を落としたことに「今回は、これでスケート人生は終わりではないので、来年を意識して体を大事にしてあげたかった。その中で課題は見つかった。オペラ座の怪人にしても、ショパンにしても、後半に4回転を入れる作業をこれからしていきたいという気持ち」と、その背景を説明した。

 目標にする3月23日開幕の世界選手権(中国・上海)では、封印してきた後半の4回転が必要になってくる。今月末には全日本選手権も控える。「(大会に)限りはありますから、欲を出さずに体調を整えていきたい。(全日本では)演技構成は変えるつもりはないです」。我慢をする決断を下した。

 全日本を戦った後は、世界選手権を視野に入れた組み立てに入る。封印を解き、ジャンプを成功させれば、フリーで今大会で記録した194・08点の更新は間違いない。ショートプログラム(SP)を含む総合成績でも300点超えが望める。300点超えは12年1月にパトリック・チャン(カナダ)がカナダ選手権で達成して以来の記録になるが、五輪や世界選手権など、ISUの公認大会では史上初の偉業となる。「300点超えは意識していない。目標点数を昔は(試合前に)書いていた。今は点数を意識してやっていく必要はない。毎日課題をみつけて、それを踏まえて成長していくことが大事」。自分との闘い。その先に結果はついてくる。

 11月の中国杯では演技前の衝突事故に見舞われた。世界選手権ではその時と同じ会場での演技となる。「その時の雪辱を…という思いはない。弱いところが見えて、自分が強くなりたい人なんだなあと、あらためて分かった」。ケガからの復活Vは通過点。SP、フリーともにすべてのジャンプを成功させ、史上初の300点超えはすぐそこにある。自分が納得できてこそ「ユヅスマイル」の完全復活だ。【鎌田直秀】

 ◆300点を超えるには…

 SPで100点、フリーで200点超えが目安になる。ISU公認大会でない12年カナダ選手権で302・14点を記録したチャンは、SP101・33点、フリー200・81点を稼いだ。

 羽生はソチ五輪SPで世界歴代最高の101・45点を出した。フリーでも、GPファイナルでは終盤の3回転ルッツで転倒したものの自己ベストの194・08点を記録し、転ばなければ200点超えが確実だった。

 負傷の影響で演技構成レベルを落とす現状でも、難度は昨季と同等を保つ。そのため現時点でも両プログラムをミスなく滑れば300点超えは可能。来年以降に後半の4回転ジャンプを解禁すれば、演技の基礎点の合計だけで6・01点増え、大台の現実味も増す。