<世界柔道連載:東京経由ロンドン行き>2

 柔道の世界選手権(9~13日、東京)の女子48キロ級代表、福見友子(25=了徳寺学園職)がV2で「世代交代」完成を狙う。谷亮子が90年代初めから08年北京五輪まで一時代を築いた階級。だが産休や議員活動による谷の離脱中に、福見が昨年の世界選手権を初制覇し、女王継承へ着々と足固めを行っている。大会連覇で12年ロンドン五輪へ絶対的リードを広げられるかどうかが焦点だ。

 現世界女王となっても、谷の存在は福見にどこまでもついてくる。北京五輪後の出産、民主党からの出馬、当選など、谷が節目を迎える度に感想を求められた。「私は自分なりに柔道一直線で頑張る」。谷は谷、自分は自分でしかない-。繰り返された言葉に揺るぎない思いがにじんでいた。

 「ポスト谷」。その看板を10年近く背負ってきた。16歳の時、谷から衝撃的な初勝利を奪った。以来、歴史的女王との比較は続いてきた。

 福見

 やっぱり世界大会などでの連覇は偉大。(質問が続くことは)それだけ谷さんの偉大さが伝わってくる。(比較されることは)他の人には感じられないプレッシャー。それをいい刺激にしたい。

 議員と柔道家の両立を目指す谷が畳の上に戻ってこない限り、真の決着はつけられない。だが谷不在でも世界選手権連覇を果たせば、12年ロンドン五輪の選考レースへ大きな意味を持つ。そのことは日本代表首脳陣も認めている。

 吉村強化委員長

 連覇なら亮子とかベテランは(五輪出場は)厳しくなるだろう。

 園田女子代表監督

 世界ランクで亮子が(五輪出場権ラインの)14位以内に入っても、同じ力なら1位の選手を選ぶ。

 五輪連覇、世界選手権7度優勝の谷から世代交代を実現できるか。「世代交代は意識していない。若い選手も出てきているので」。48キロ級は世界ランク5位以内に今大会代表の浅見と、今回落選の山岸がいる。この1年で2人に敗れた。現在の地位が盤石でないことは自覚している。「48キロ級は私が勝つという気持ちでやっている。他の選手より経験がある」。谷への特別意識は今はない。意識が働くのは、女王の座に座り続けることだけだ。【広重竜太郎】