<西武1-3楽天>◇16日◇西武ドーム

 マー君が、もう1つの金字塔を打ち立てた。楽天田中将大投手(24)が西武を8回5安打1失点に抑え、既に歴代単独1位となっている開幕からの連勝を17に伸ばした。昨年8月26日から続く連勝は21。51~52年松田(巨人)、57年稲尾(西鉄)を抜き、こちらも歴代単独1位。およそ1年間、負けていないエースに引っ張られ、チームは2連勝で貯金を今季最多タイ20に戻した。西武の自力優勝を消し、球団初のマジック点灯に近づいた。

 額に大粒の汗をにじませ、田中はヒーローインタビューを受けた。「何より今日のカード初戦を、チーム全員で勝つことができた。それが一番うれしいです」と笑顔で答えた。また1つ、プロ野球新記録をつくっても、目の前の試合に勝ったことが全て。21連勝の金字塔を打ち立てたが「みんなの力。シーズンが終わってから振り返りたい」と、いつものマー君節だった。

 2度のピンチで気迫がほとばしった。1回無死二、三塁。4回1死三塁。どちらも三塁に走者を背負ったが「点を取られるようなアウトにはしたくなかった。1点でもあげたくない」と、三振かポップフライ狙いで通した。どちらも無失点で切り抜け、先制点は与えなかった。「気持ちが入って力む場面でも、ここだけは、というのを守って狙ったところに投げられた」と、動じることなく切り抜けた。

 酷な条件をものともしなかった。猛暑の日本列島。西武ドームは、ドームとはいえ、グラウンド上に空調はない。恐らく、夏場は12球団で最も暑い本拠地だ。この日も午後2時の時点で気温34・8度、湿度52%。特に、マウンド付近は風の吹き抜けが少なく、ムワッとした空気に襲われる。

 しかも、同球場での田中の成績は試合前の段階で通算3勝5敗と、12球団の本拠地で唯一負け越していた。昨年8月19日に最後の黒星を喫した場所、相手でもある。一見不利なデータがそろったが、「思ったよりは暑くなかったです。汗は出ましたけどね。(過去の成績は)頭には入れて投げましたけど、いつも通り」とケロリ。試合中から水分を多めにとって、問題なく乗り切った。

 全ては準備のたまものだった。前日15日「暑さと闘うわけじゃない」と言ったが、実は対策をしていた。前回登板後の練習日。厚手のウエアを着てウオーキングを繰り返した。次回が暑い西武ドームと見据えてのこと。トレーニング担当の星コーチは「こっちが言う前にやっていた」と感心した。チーム宿舎では、この日の朝「まめに水分をとるように」と選手に伝達されたが、同じくトレーニング担当の秋田コーチは「田中には特に話はしていません」。前人未到の21連勝は、こうした準備の積み重ねといっていい。

 2連勝を呼び込み、再び今季最多の貯金20。優勝マジック点灯も近い。田中は「すごく良い緊張感の中で試合ができている。本当に幸せ」と言った。この先、ますます緊張感が高まるが、エースは勝つために投げ続ける。【古川真弥】

 ▼田中が開幕から17連勝となり、自らの開幕連勝のプロ野球記録を更新。昨年8月26日日本ハム戦からは通算21連勝で、51~52年松田(巨人)57年稲尾(西鉄)の20連勝を抜いて連続シーズンを含む最多連勝のプロ野球新記録をマークした。1シーズンに17連勝以上は57年稲尾20連勝、51年松田19連勝、40年須田(巨人)18連勝に次いで4人目。2つのプロ野球記録を更新した田中が次に狙うのは稲尾のシーズン20連勝だけとなった。連勝中の田中は163安打を許しているが、得点圏に走者を置いた場面では160打数23安打、被打率1割4分4厘(満塁では13打数0安打)。1イニングに適時安打を2本打たれたのは今年の5月28日阪神戦の3回(鳥谷、マートン)の1度だけで、1試合に適時安打を3本打たれたのは1度もない。簡単にはタイムリーを許さない投球で連勝を伸ばしている。