生まれ故郷の大阪で、“新生大坂”がついに頂点に立った。世界4位で第1シードの大坂なおみ(21=日清食品)が、1月の全豪以来、ツアー通算4勝目を挙げた。同41位のパブリュチェンコワ(ロシア)に6-2、6-3でストレート勝ち。日本女子の大会優勝は、95年伊達公子以来24年ぶり史上2人目となった。安定と破壊力を兼ね備えた新しいスタイルで、ついに念願の優勝を手にした。

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少しはにかみ、天を仰ぎ、そして、久しぶりの大坂スマイルが、大阪ではじけた。わずか69分。1度もブレークポイントさえ握らせない快勝で、勝利の瞬間、両手を突き上げた。「ありがとうございます。(試合は)おもしろかった」。笑顔の先には、両親がいた。

関係者席にいた父フランソワさんと母環(たまき)さんに思わず駆け寄り抱き合った。その両親が北海道から移り住み、姉のまり、なおみ自身が生まれ、3歳まで育った大阪。その地での優勝に「やはり運命みたいなものを感じる」。思い出すのは母、姉とともに公園に行き、肉まんを食べたことだ。

1月の全豪で4大大会連続優勝。直後には、アジア男女を通じて、史上初のシングルス世界1位となった。しかし、その後の重圧は「何もかも、自分が経験したことがないものだった」。コーチ2人と別れ、6月の全仏、7月のウィンブルドンの時期は「テニス人生で最悪の期間だった」と振り返る。

しかし、その苦しい期間でも、両親はそばにいて、彼女に寄り添った。そして「落ち着いて」とアドバイスを送った。今週、自分に言い聞かせていたのは「あわてなければ、絶対にうまくいく。苦しい時期もいい経験」。それも両親の教えだった。

この優勝で、年末上位8人だけが出場資格のある10月27日開幕のツアー最終戦WTAファイナル(中国・深セン)のレースでも大きく前進した。大会前は7位だったレース順位は、5位にまで上がる予定だ。苦難の道を乗り越え、生地が大坂を一回り成長させた。【吉松忠弘】