白い砂浜が続くコパカバーナビーチが、熱気に包まれる。トライアスロン女子は20日午前11時(日本時間同日午後11時)にリオデジャネイロの名所「コパカバーナ要塞(ようさい)」近くの砂浜でスタート。日本のエース上田藍(32=ペリエ・グリーンタワー・ブリヂストン・稲毛インター)が日本初のメダル獲得を目指す。過酷なレースで武器になるのが、親譲りの明るさと社交性。今季好調な上田が、3回目の五輪で日本勢初のメダルに挑む。

 「金メダルをとることができました。ありがとうございます」。そう日記に書いてある8月20日が、やってきた。冬とはいえ、日差しが強いリオの海岸で上田は「順調です」ときっぱり。ロンドン五輪ゴール直後、山根英紀コーチ(48)に言った「あと4年。リオまでお願いします」。約束の瞬間が、近づいてきた。

 日本からは、頼もしい応援団がやってきた。京都の手描き友禅職人でもある父守男さんと母ひとみさん。「私たちのことを『一番の応援団』と言ってくれるのがうれしい」と守男さん。今回も上田が航空券とホテルを用意。2人を「メダルレース」に招待した。

 活躍できるのは、父のおかげだ。京都・洛北高までに水泳と陸上をやっていた上田は新しいスポーツとしてトライアスロンに目覚めた。娘の気持ちを知った守男さんは自ら調べて、トライアスロンのクラブ「稲毛インター」に連絡。何の実績もない上田を単身千葉に送り出した。「ほとんど押しかけ。参りました」と山根コーチは苦笑いする。トライアスロン界の「藍ちゃん」としての人気を支えるのは、いつも明るい笑顔。不機嫌な時「いつも笑顔の方がいい」と言ってくれた父のおかげでもある。

 スイム、バイク、ランの順で争うトライアスロンでは、周囲の選手との協力が不可欠になる。スイムから上がってバイクで集団を作るとき、それぞれの選手の情報が必要。バイクが強い選手とローテーション(風の抵抗を受ける先頭を入れ替わる走り方)を組めば、余力を残してランに入れるからだ。それができたからこそ、世界のトップレベルの仲間入りができる。

 各国選手との協力態勢を作るとき、必要になるのが積極性と明るさ。どんどん話しかけ、笑顔で情報を共有する。「うまく戦略が立てられるようになった。トップ選手の特徴も分かってきた」。だからこそ、好成績が残せる。

 今年に入って、上田は絶好調。世界のトップが集まる世界選手権シリーズでは5戦連続で入賞した。世界ランクも4位まで急上昇。十分に金メダルを狙える位置だ。「レースが楽しみで仕方がない。メダル、必ず取ります」。砂浜を走って海に入るスタート、アップダウンの激しいバイクコースは抵抗をうけにくい身長155センチの上田向き。コパカバーナのビーチを、海外選手とともに上田は泳ぎ、こぎ、そして走る。【荻島弘一】