18年平昌冬季五輪(ピョンチャンオリンピック)男子銀メダルの宇野昌磨(21=トヨタ自動車)が、前人未到「5回転ジャンプ」の練習へ意欲を示した。この日のフリーでは、決めれば世界初となったトリプルアクセル(3回転半)-4回転トーループで転倒。189・46点の3位となった。その演技後の取材エリアで、5回転トーループを「練習はしていきたい」。国際スケート連盟(ISU)が基礎点さえ設定してない技の練習を口にした。大会は第2日を終え、2連覇を目指す日本は79点で2位。91点の米国が首位をキープした。

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靴を脱ぎ、額の汗を拭って宇野が発した言葉に、取材エリアが騒然となった。

「(4回転)ルッツもですし、それ以上のジャンプも視野に入れて練習したいです。ルール的にあるのか知らないですけれど、(4回転)トーループが回りすぎているので、トーループをちょこっとだけ、練習していこうかなと思います」

広報担当者の「ラスト1問」の指示と同時に「それは5回転?」という問いかけが飛んだ。念押しの確認に対し「『練習する』っていうのは、いくら公言しても『本番ではやりません』って言えば」と笑わせた上で「練習はしていきたいと思います」と言い切った。

ISUが基礎点さえ設定していない5回転。五輪2連覇の羽生結弦(ANA)が世界初の4回転半挑戦を公言しているが、宇野は「4回転半は僕にはあまり向いていない」と明かす。アクセルは唯一、前向きに踏み切るジャンプ。宇野が挑もうとしている5回転トーループとは単純に難易度を比較できないが、夢の大技であることは確かだ。

この日のフリーでは、3回転半-4回転トーループの離れ業に挑戦。4回転トーループの軸が傾き、転倒したが「何年もかけて、自分の武器にしたらいい」と誓った。冒頭には4回転フリップ-3回転トーループ成功で3・30点の加点。3月の世界選手権で4位に沈み、失意の時を過ごした先に来季の光が差し込んだ。

なぜ、ここまでの高難度ジャンプに言及したのか。

「僕は今季、跳べるはずのジャンプを、いくつも練習せずに1年を過ごした。でも、やっぱり男子の成長はとてつもなく早い。自分もまだ、成長できる年だからこそ『成長していかなければいけない』と世界選手権で強く思いました」

4回転はアクセル、ルッツ以外の4種類を習得。だが、平昌五輪でも組み込んだ4回転ループは回避して今季を過ごした。未知の4回転ルッツ、5回転への欲が、21歳の覚悟を物語る。「今季の全ての演技が自分。強い自分、弱い自分、全部が出た」。宇野が新たな境地に入った。【松本航】