遠征先のマレーシアで交通事故に巻き込まれて負傷したバドミントン男子シングルス世界ランキング1位の桃田賢斗(25=NTT東日本)が15日夕、クアラルンプールから成田空港に帰国した。

眉間に大きな傷跡があったが、しっかりとした足取りで報道陣やファンが出迎えた到着ロビーに姿を見せた。今後は日本でも精密検査を受ける予定。休養を入れた後、3月11日開幕の全英オープン(バーミンガム)での実戦復帰を目指して調整する。

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午後5時57分、桃田は厳戒態勢の到着ロビーに現れた。事故車に同乗していてけがをしたコーチの平山優さん、トレーナーの森本哲史さんの姿もあった。リュックを背負い、しっかりとした足取りで詰めかけた150人近い報道陣に軽く会釈し、大勢のファンが見守る通路を歩いた。

目深にかぶった黒い帽子と大きな白いマスクにサングラス。その表情は分からなかったが、眉間には事故の衝撃の大きさを物語るような生々しい大きな傷があった。日本バドミントン協会の関係者と握手すると、肩をポンポンとたたかれた。言葉を発することはなく、関係者入り口へと消えた。

桃田は成田空港からすぐに病院へと直行2日間にわたって精密検査を受けるという。今後は所属先のNTT東日本に戻り、3月の全英オープンでの復帰を目指すことになる。須賀監督は安堵(あんど)の表情で「本当に無事で良かった。ご心配をお掛けしました。温かく見守っていただければと思います」と話した。

20年初戦となったマレーシアマスターズで優勝し、幸先のいいスタートを切った。ただ、足のケガで次戦のインドネシアマスターズ(14日開幕)を欠場することになった。そして13日午前5時ごろ、帰国で空港に向かうために乗っていたワゴン車が高速道路で大型トラックに追突。運転手は死亡、桃田は顔面3カ所の裂傷と全身打撲を負った。

日本代表朴監督と中西コーチがインドネシアに向かうチームを離れ、急きょ桃田に付き添った。13日には入院している桃田のもとに元マレーシア代表でバドミントン界の「レジェンド」リー・チョンウェイ氏が見舞いに訪れた。大きな事故に巻き込まれながらも負傷で済んだことは不幸中の幸いだった。関係者によると、14日夜にクアラルンプール近郊の病院を退院した。

チョンウェイ氏が「世界中のファンが彼のことを心配している。桃田が完全に回復してコートに戻ってくることを祈っている」とコメントしたように、東京オリンピック(五輪)の金メダルが期待される桃田は、精神的な負担も含め、さまざまな不安をかこうことになる。チーム関係者が「精神的なダメージもある。しばらく休養して、検査の結果を見て判断します」と話した通り、慎重に実戦復帰を目指していく。【松熊洋介】