14年ソチ、18年平昌オリンピック(五輪)2連覇王者で、今年7月にプロ転向した羽生結弦さん(27)が夢を現実にした。異例のワンマンとなる初アイスショーが初日を迎え、代名詞の「SEIMEI」や新曲「いつか終わる夢」など8曲を披露。幼少期からの映像にトークも織り交ぜた、休憩なし約90分間ノンストップに半生を込め「フィギュアスケートの限界を超えていきたい」と新境地を切り開いた。第2章の始まりとなる公演は5日も同所で。12月2、3、5日は青森・フラット八戸で上演する。

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新伝説の序章は「SEIMEI」で幕を開けた。冬季アジア初2個目の金メダルを手にした18年平昌五輪フリー曲を舞う…その前から驚かせた。「ただいまから6分間練習を開始します」。公式戦と同じ試合前の最終調整を告げるアナウンス。ショーでは例を見ない試みからベールを脱いだ。

たった1人、競技さながらの緊迫感で整えると、4回転サルコー、4回転トーループを美しく着氷する。プロのショーならでは、となったのはその後だった。

繰り出したのはトリプルアクセル(3回転半)3連発。「キックアウト(ジャンプの跳び過ぎによるノーカウント)ですけど、あえてプロだからこそできるものを」と試合では認められていない構成を用意し“競技会以上”を目指す目標通りの高難度を見せつけた。

7月19日のプロ転向会見から108日。「無理くり会場を押さえて構想を練って映像や曲順など演出を考えてきた。妥協せず、新しい形を見守っていただけたら」。“通常”は2曲も舞えば喝采のショーで“異常”と言える8曲。鍵は「体力が持つのか」だったが「1曲に全力を尽くし切る僕が、その後また滑るなんて考えられなかった。大変だったけれど、頭から(90分間の)通しを5回やり切って今日を迎えられるまで強化してきた」と、ふたを開けてみれば90分間ノンストップ。「演出も今朝までかかって出来上がった」と直前までこだわった。新たな1歩に譲歩なし。1人だからこそ理想を追い求めた。

公演は幼少期から五輪3大会、東日本大震災の映像も織り交ぜ「羽生結弦のドキュメント」に仕立てた。万感を込めたのは、自身が振り付けした新曲「いつか終わる夢」だ。演出家MIKIKOさんと初コラボ。愛する「ファイナルファンタジー10」のテーマ曲とプロジェクションマッピングを融合させ「夢だった4回転半の(世界初)成功者になれず苦しみながら、でもまだ皆さんの期待に応えたい。そんな心のジレンマを表現した」と胸中も超満員の7900人と共有した。

競技会から離れた後は「スケートを始めた4歳から金メダルを目指してきた人生で初めて、目標がない中ぶらりんな状態」に陥ったが、新章を自己プロデュースする過程で再燃した。「今できることを目いっぱいやって、フィギュアスケートの限界を超えていけるように」。序章、その初演から異次元の新ステージへファンを誘った。【木下淳】

○…事前に希望曲を募ったピックアップコーナー(C)では小学生時代の「スパルタカス」を選んだ。同曲を振り付けた横浜市在住の恩師、都築章一郎コーチ(84)を会場に招き「来てくださって、めちゃくちゃうれしい。僕の初めてのSPでした」と紹介。満点6・0の旧採点システム時代で「今とは違った面白いステップ」で沸かせた。質問Cでは約2万7000通の中から公演テーマなど3問に答え、日で内容が異なるリクエストCでは、場内のファンから腕輪の光の色を用いて要望された「レッツゴークレイジー」を舞った。