【プラハ24日(日本時間25日)=藤塚大輔】フィギュアスケート男子の鍵山優真(22=オリエンタルバイオ/中京大)が、脱・完璧主義で世界選手権に臨む。開幕前日に本番会場で公式練習に参加。2大会連続銀メダルだった2月のミラノ・コルティナ五輪から1カ月で迎える中、満足のいく演技で今季最終戦を締めくくる。
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自分の心を満たせるか。鍵山はそれだけを追い求める。「順位や点数にはこだわっていない。とにかく自分が満足できればいい」。ミラノ五輪から1カ月。苦難のシーズンの最終戦でこだわるのは、自身の納得感だ。
五輪はやり切れなかった。今季の鬼門だったフリーでは、3本のジャンプでミス。合計点の自己ベストを約30点も下回り、悲願の金メダルに遠く及ばなかった。
五輪直後は今季未投入の4回転ジャンプを跳ぶことに喜びを見いだしたが「モチベーションの波は大きかった」と心にもやがかかったままだった。
転機は孤独に身を置いた時間だった。3月中旬、父正和コーチが他選手の海外遠征に同行したため、1人で練習する時間が増えた。「どう頑張ろうか」と自問する中、これまで大きな目標にとらわれていたことに気が付いた。
「今日は前半だけまとめよう」「スピンをこなそう」
あえて「小さな満足」をかみしめることから、再出発を切った。「全部を完璧にするのを捨てた。期待値が高くなると納得できない日が続くから」。心の霧は少しずつ晴れていった。
迎える世界選手権。初の頂点には完璧な演技が求められるが、執着はしない。
「ノーミスできたかより、やり切ったかどうか。たとえ失敗しても、これ以上できないと思える演技ができたなら、それが満足のライン。完璧にやるより、とにかく全力で最後まで出し切りたい」
この日のショートプログラム(SP)の通し練習。全3本のジャンプを丁寧に降りると、自然と右拳を握った。小さな満足を積み重ねた先に、明るい光が差すと信じる。


