富田宇宙(29=日体大大学院)が男子400メートル自由形(視覚障害S11)でアジア新をマークした。

午前の予選で4分33秒71で泳ぎ、今年6月の英国遠征でマークしていた今季世界ランキング1位のアジア記録4分34秒59を更新。夕方の決勝では4分34秒79に終わったが、世界屈指の実力を見せつけた。

「2本目もさらに記録を更新しようとしましたが、疲れで体幹にブレが出てしまいました。ただ、このタイムが続けて出ているのはいいことだと思います」。富田の表情には悔しさと満足感が入り交じっていた。

好調なシーズンを送っている。5~6月の欧州遠征で好記録を連発した。800メートル自由形で世界記録を樹立したほか、バタフライ、個人メドレーを含めて5種目で今季世界ランク1位のタイムを保持している。網膜色素変性症が進行したことで昨シーズン、クラスがS13(弱視)からS11(全盲)に変更になり、一気に世界のトップ戦線に浮上。日本のエース木村敬一(東京ガス)とも大会ごとにデッドヒートを繰り広げている。前日の50メートル自由形では敗れたが、得意種目でまたタイムを短縮した。

日体大大学院に在学中で、水泳部では健常者とまったく同じメニューを消化している。日本で一番厳しい練習で知られる同部の泳ぎ込みは1日1万5000メートル。「自分の限界を超える練習が記録更新につながっている」といってはばからない。修士から博士課程へ進むための論文に取り組んでいるが、練習とレースに追われて研究が進まないのが悩みの種という。

10月のジャカルタ・アジアパラ大会では個人5種目にエントリー。本格的な国際大会の経験は乏しいが、「確実に自己ベストを更新して金メダルを取ってきたい」と言葉に力をこめた。【小堀泰男】