異色の社長が誕生した。バスケットボール女子日本代表主将の高田真希(30=デンソー)が、自ら代表取締役社長を務める「株式会社TRUE HOPE」を設立した。6日に公表し、早速動きだした。社長として日刊スポーツのウェブでの取材に応じ、活動状況や今後の展望を語った。東京五輪での活躍も期待される有力選手はコート上での活躍と社業の両立を目指す。

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社名がプリントされた黒いTシャツ姿で、新米社長は堂々と所信表明した。

高田 バスケットボールの魅力をもっと広げていきたい。自分が経験してきたことを、子供をはじめ多くの人たちに伝えていきたい。そんな思いが日々強くなり、どうすれば良いかを考えていく中で、会社を設立して自分が思うように動ける仕組みをつくることが一番早いと思った。

6日に会社設立を公表した。主な事業内容はイベント業。全国各地でバスケットボール教室を開き、子供たちに上達のヒントを与え、楽しさを教えていく。構想自体は5年ほど前から漠然と胸に抱いていた。

高田 本格的に動きだしたのはここ1、2年のこと。誰かに相談したというよりは、いろいろな人に自分の夢を語る中で、有意義な情報を教えてもらったり、深い知見を持つ人を紹介してもらったりした。そうして輪がどんどん広がり、つながっていった。

新型コロナウイルス感染拡大が広がる中での門出。イベント業界にはとりわけ激しい逆風が吹き荒れるなか、毅然(きぜん)と第1歩を踏み出した。

高田 行うはずだったイベントを開催できず、難しさは感じている。それでも事態が収束したとき、沈んだ世の中に対して、スポーツはすごい力を与えられると思っている。スポーツの魅力で、明るい日本を取り戻したい。そのための準備は今からしていかないと。

全国各地でのバスケットボール教室開催に先駆け、SNSでの会員制オンラインサロン(月980円から)をスタート。「高田真希女子アスリート社長室」と名付けたその交流会では、寄せられたバスケットに関する質問や日常生活の悩みに対し、丁寧に回答し、助言を送る。プライベートも公開し、選手や社長としての奮闘ぶりも伝えていく。現時点での入会者は約30人だが、性別や年齢を問わず、幅広い層が集い始めた。

高田 当初は20人ほどからのスタートを想定していたので、まずは目標をクリア。今後はさらに入会者を増やすと同時に、退会者を少なくすることも大切。時間的余裕がある今は、できるだけ毎日投稿しようと思っている。

会社発展のためには、アスリートとしての活躍が不可欠だ。コート上で存在感を発揮することが、何よりの“営業活動”になることは重々承知している。

高田 起業したからこそ、プレーヤーとしてさらに成長していきたい。逆にいえば、会社の存在はプレーに支障をきたすマイナス材料につながるとは思っていない。もっとうまくならなければと思わせてくれるプラス材料だと感じている。

16年リオデジャネイロ五輪でも日本代表に選出され、20年ぶりのベスト8進出に貢献した。来年の東京五輪では、主将の大役を担う公算が大きい。

高田 延期が決まったときにはびっくりしたが、状況を考えると当然の判断だと思う。延期された1年間で何をするかが大事。目標の金メダルを目指し、しっかり準備していきたい。

大きな夢を描く社長兼主将の表情は、自信と決意に満ちている。【奥岡幹浩】

◆主な社長アスリート サッカーの本田圭佑が有名。複数クラブの実質的オーナーとして経営にかかわるほか、投資会社を共同設立。オンラインでのサッカー指導事業を行う会社の最高経営責任者(CEO)も務める。本田の盟友・長友佑都も運動や食事などを事業軸とする会社を設立し、代表取締役社長に就任している。

○…Wリーグがシーズン途中で終了してオフに入り、高田はチームメートと離れて調整している。今年2月の代表遠征中に腰を痛めたことを反省し「筋力を増やすというよりは、体をしなやかにしたり、関節の可動域を広げていくためのトレーニングに取り組んでいる」。外出がままならずボールを使っての練習からは遠ざかっている。そうした状況下でも、「ボール感覚を失いたくない。自室にいてもバスケットボールを常に触れるような場所に置いている」と話す。

○…高田がバスケットボールよりも先に出会ったスポーツは空手だった。両親が護身の一環で何か格闘技を習わせたいと思っていたところ、自宅の前に空手道場がオープン。小4から中学卒業まで通った。全国規模の大会を小5から中2まで4連覇するなど、「出場した大会ではほとんど優勝していた」。高校進学を機にバスケ一本に絞ったが、もし空手の道を選んでいたら、世界有数の空手家になっていたかもしれない!?

◆高田真希(たかだ・まき) 1989年(平元)8月23日、愛知県豊橋市生まれ。小学校5年の時にバスケと出会い、中学から本格的に競技に取り組む。名門・桜花学園(愛知)ではインターハイ制覇などを経験し、卒業後はWリーグのデンソーへ。08-09年新人王、13-14年MVP。ベスト5選出は今季で4年連続8回目。通算6118得点はリーグ歴代2位で、通算3292リバウンドは歴代最多を更新中。デンソー入りした1年目から日本代表入り。16年リオデジャネイロ五輪代表、W杯には3度出場。ポジションはセンター。183センチ、76キロ。好きな食べ物は焼き肉とすし。おすすめの豊橋みやげはブラックサンダーあん巻き。