ショートプログラム(SP)首位の山本草太(20=中京大)がフリーでも139・35点で1位となり、合計220・12点で優勝した。冒頭の4回転サルコーなど、計3回のジャンプの転倒はあったが、体力的に厳しい最後の3回転ルッツ-3回転トーループで踏ん張る意地もみせた。

なにより、成長を感じられたのは「パンクをしなかったこと」だという。昨季は1試合に約1本、ジャンプ中に腕をほどいてしまい、回転が足らずに着氷することがあった。課題として改善を目指してきた結果、今大会はSP、フリーでパンクは1度もなかった。腕を締めきったままで回りきっての転倒は、失敗の中に1つの成功も含んでいた。大西コーチにも「ナイストライ。転けるだけ転けて足にきたと思うけど、最後まで(腕を)締めて滑りきったのは偉い」と評価された。

プログラムの「ドラゴン」はノービス時代の使用曲で、編集、振り付けをシニア用にリメークして再演している。当時の指導者が同コーチで、今季から再び師事を仰いでいる。その理由の1つにあるのが、ソチ五輪5位の町田樹さんの存在。五輪前に同コーチに指導を受けるようになり、一気に世界舞台でトップを争うようになった。激しい国内の代表争いも勝ち抜き、ソチでもメダルまであと1歩に迫った。「やっぱり、五輪シーズンからさらに結果を出していって、僕もそのシーズンを見ていて、映像でも拝見しましたし、似ている部分がある。僕もこれから上に上り詰めていく立場としてもっともっと努力したい」。同じような上昇カーブを思い描く。

同コーチの指導は基本が重視される。週1回のコンパルソリーの時間などで、滑りの技術を高めていく。一蹴りで滑る距離が長くなれば、体力的にも恩恵が期待できる。「あれだけ転けた割には、スタミナは持ったほう」との感想に、早くも成果を感じさせた。