初の花園決勝で、京都成章が力尽きた。連覇を狙う桐蔭学園に対し、前半2分にFB辻野隼大(3年)が先制PG、同30分にSH宮尾昌典(3年)がトライを決め、前半を10-10で折り返したが、後半に突き放されて15-32。巨漢ロックの“ジャイアン”本橋拓馬(3年)は「すべてにおいて相手が1枚上」と泣いた。日本一へ再出発する。桐蔭学園は戦後6校目、史上9校目の大会連覇を遂げた。

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京都成章は最後まで戦った。「ロスタイム1分」とアナウンスされた後半終了間際。ゴール前22メートル地点のラックから右に展開、193センチのロック本橋が巨体を躍らせ、トライを決めた。表示は30分50秒を超え、まだ17点差あった。もう負けだった。だが、すぐ起き上がり、右手を突き上げ「もう1本!」とキックオフに向かった。

桐蔭学園のロック青木、CTB秋浜、FB矢崎ら超高校級の“個”の強さに“数”で対抗した。就任34年目の湯浅泰正監督(56)が植え付けた“ピラニアタックル”で数的優位を作り、立ち向かった。前半は10-10。同2分にゴール正面40メートルからFB辻野のPGで先制。終了間際にはゴール前ラックからSH宮尾がトライを決めた。

だが、後半は5-22。本橋は「ブレークダウンの強さ、体の強さ。すべてで桐蔭さんが1枚上でした。僕らは前半に消耗して、後半は走れなかった」。ターンオーバーしても、直後にターンオーバーされた。前半は接点で負けず、容易にゲインを切らせなかったディフェンスが息切れした。

湯浅監督は「ウチもホント良くやった。スキルはそんな変わらないと思いました」と選手をたたえた。花園出場13度目。ピラニアタックルに代表される組織ディフェンスで、4度目にして準決勝の壁は破った。

初の決勝。最後の壁を破るには“最後のピース”が必要だ。「スキル、戦術だけを考えていけば、置いていかれる。桐蔭さんは体の使い方、考えが動きにリンクする。ウチも個々が自分の体を分かって、考えと動きがリンクすれば、1ランク上に行けるんじゃ…」。

集団で挑むラグビーから、強い“個々”が集団で挑むラグビーへ。初の決勝で勝てるほど花園は甘くない。桐蔭学園は3度目、あの東福岡も4度目で優勝を手にした。悔しさと手応えと課題を得て、京都成章が再出発する。【加藤裕一】

◆京都成章 1986年(昭61)創立の男女共学私立校。普通科に1666人(女子706人)が学ぶ。ラグビー部創部は86年、部員123人。花園は前回大会まで4強3回、8強5回だった。ラグビー部の主なOBは坂手淳史(パナソニック)矢富勇毅(ヤマハ発動機)ら。京都市西京区大枝沓掛町26の11。