来夏のパリ五輪予選として開催されるW杯バレーが、いよいよ迫ってきた。女子は16日、男子は30日に、ともに東京・代々木第1体育館で幕を開ける。先陣を切る女子日本代表(世界ランキング8位)の初戦の相手はチリ。92年バルセロナ五輪以来となる大会1年前の出場権獲得を目指すチームのキーマンを「火の鳥の羽」(全6回)と題して紹介する。

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セッター関菜々巳(24=東レ)は華麗なトスワークだけでなく、明るい笑顔と“コミュ力”でチーム力の底上げを担っている。7月まで行われたネーションズリーグ(VNL)では、試合後に積極的にミーティングを開き、アタッカー陣と意思疎通を図った。「テンポはどうしたらいいか」「どういうトスがいいのか」。強化合宿中も入念に話し合い、息のあったプレーにつなげている。

元々は人見知りで、1人の時間を好むタイプ。「話すこと自体あんまり好きじゃなかった」と明かす。変わったのは17年の東レ入団後。同ポジションの大先輩で、同年に退団した中道瞳さんからの「コミュニケーションが一番大事」というアドバイスだった。意識的に会話の数を増やし、今では「年々いろんな発見があるから楽しくなってきた」と持ち味になった。

豊富な代表経験も武器だ。19年に初めて代表入り。東京五輪メンバーから外れるなど挫折も味わったが、昨年の世界選手権では全試合にスタメン出場し5位に貢献した。今年のVNLでも勝負どころを任され、真鍋監督からはW杯バレーに向け「今はVNLよりコンビの精度もはるかにいい」と爆発を期待されている。

テーマは熱願冷諦。「(VNLでは)競った場面で焦ってしまうところがすごくあった。私がバタついてしまうとチーム全体がバタバタする」。心は熱く、頭は冷静に-。ルーティンの深呼吸で気持ちを整える。「アタッカーやレシーバーを一番見ることが出来るのがセッター。どんな場面でも動揺しない」。重ねたコミュニケーションがここぞでの引き出しになる。司令塔としての自覚を胸に、世界に挑む。【勝部晃多】

◆パリ五輪への道 パリ五輪出場枠は開催国フランスを含む12。五輪予選のW杯バレーは、世界ランキング上位24カ国が8カ国ずつ3組に分かれ、日本など3都市で対戦。各組上位2カ国の計6カ国が出場権を獲得する。残る5枠は、来年のVNL予選ラウンド終了時の世界ランキングにより決定し、W杯バレーで出場を決めた6カ国+フランスを除く世界ランキング上位5カ国が出場権を得る。日本がW杯バレーで獲得を逃した場合は、来年のVNLに出場しランキングのポイントを重ねていくことが必要となる。

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