チェコの試合を生で見た人は、こんな感想を抱くだろう。「投手力はともかく、打撃は意外にいい」。アマチュア選手が中心のチェコ打線は、ここまでWBCの3試合で17安打、打率1割9分8厘。台湾、韓国といった強豪国に対し、防御率10・88の投球と比べ奮闘している。打撃練習ではレーザーポインターを活用。使用事情を深掘りした。

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野球場でレーザーポインターといえば、妨害行為の定番アイテムとして知られる。だが、チェコの打撃練習には、打者の反応向上のため欠かせない道具となっている。

試合前、打撃姿勢をとった打者の前に、黒い布がかけられる。布には白い線で長方形のストライクゾーンと、真ん中付近に正方形が。打者の後方、試合なら捕手や審判が座る位置から、クンスト・アシスタントコーチが布に向かって、赤と緑のレーザーポインターを照射する。

第1段階では、ストライクゾーン内に赤い点が照らされればスイング。緑ならバットを止める。照射方法は全部で7段階。赤と緑が同時にストライクゾーンに現れれば、赤の部分に向けてのみスイングするなど、慣れれば上の段階に進んでいく。照射点をストライクゾーンからボールゾーンへ移動させるなど、変化球への対応も訓練できる。

練習の主目的は、打者の投球に対する反応速度向上だ。神経内科医のパベル・ハジム監督は、医学的観点からも「よりボールが長く見られるようになった。引きつけて打てるようになったのが成果」と説明する。約2カ月前に韓国の業者が練習を訪問。「ニューロビジョン」として紹介され、導入を決めた。昨季もメジャーリーグで活躍したバブラ、米3A経験者のチェルベンカら主力打者も取り組んでいることから、チーム全員が積極的に活用している。

なぜ、チェコだけが使用するのか。“野球途上国”ならではの事情がある。まず、国内リーグには快速投手が少なく、速い球を打席で見た経験が少ない。アマチュアなので、チームに打撃投手もいない。高速球を投げるマシンもない。それでも、WBCでは日本などの150キロ投手と対戦する。医師やアナリスト、エンジニアらがいるチームは、物はなくても、知恵を使って挑む。【斎藤直樹】