今回は、元NFL、NBAチアリーダー柳下容子さん(東京ガールズ代表)が講師を務めるシニアチアダンスチーム「Shibuya Iris」(以下、アイリス)です。シニアが輝く活動の様子や今後の抱負を聞きました。

Shibuya Irisのメンバー
Shibuya Irisのメンバー

アイリス発足は、渋谷区の生涯スポーツ活動の振興がきっかけだった。1964年東京オリンピック(五輪)を経験したシニアたちが、20年大会を元気に迎えるため、チアリーダーとして応援参加する内容。渋谷区議会議員の岡田マリ氏が、18年3月の定例会本会議で提案した。

同区内の介護施設がこの企画に賛同。区が募集をかけたところ、エアロビクスや舞踊の経験者、渋谷区オリジナル体操「若返るダイヤモンド体操」教室に通う人など、多くの希望者が集まった。

講師は、渋谷区在住の柳下さん。レッスンは笑顔体操から始まる。「笑顔チェックしまーす!」。柳下さんが1から10まで数えると、メンバーの顔がほころんでいく。「10!」の瞬間には手を万歳しながら、最高の笑顔を見せた。

老人ホームのイベントに出演して盛り上げる
老人ホームのイベントに出演して盛り上げる

日本人で初めてNFLとNBAのチアリーダーとして活動した柳下さんのモットーは笑顔。「笑顔には2つあります。1つ目は、自然と笑みがこぼれる(相手から)“受ける笑顔”。2つ目は、誰かに笑顔になってもらいたいから“自分からする笑顔(Do Smlie!)”。チアリーダーは2つ目の笑顔が大切。最近では『真顔が笑顔』が合言葉です」。

指導では「表情がすてきになるための顔のエクササイズ、そして、かっこよく立ち、歩くための意識」を大切にしている。首のシワやほうれい線を薄くし、目をパッチリさせるエクササイズや、姿勢のために背中を鍛える筋トレなども行っている。

手先まで意識を向けるため、手と顔で同時にグーとパーを繰り返すエクササイズもある。「ダンスにメリハリができる」という。最後は「じゃんけんほい!」。勝った人と柳下さんがビッグハグをして、喜びを分かち合う。

渋谷フェスティバル2019でパフォーマンス
渋谷フェスティバル2019でパフォーマンス

シニアがメンバーだけにケガには気を使う。「膝や腰を痛めている方もいます。危険を感じたら代替案を伝えています。病院の先生に聞くなどして、今まで知らなかった知識を学ぶことで自分の域が広がり、自信につながりました」と話す。

メンバー最高齢は林美枝(よしえ)さん(84)。喜寿の時に病気の夫にエールを送るためにチアを始めたが「3年後に夫が亡くなり、エールを送る対象がなくなり気がなえてしまって、チアを続けられなくなりました」と振り返る。気持ちを整理する中で「またチアをやりたい、そう思った時にこの募集を見つけました。砂漠のオアシスのようにうれしかったです。本当に楽しくて、今一番楽しみな習い事です! 体が動く間はぜひ続けたいです!」とうれしそうだ。ほかのメンバーからは「チアを始めてから運動が楽しくなり、エレベーターを階段に替えるエクササイズを始めました」「自宅で笑顔の練習をしていると、家族が共感し、家族だんらんにつながっています」と“元気”につながっている。

チーム活動の発信ツールはSNS。最初は使い方に不慣れだったメンバーも、スマートフォンに替えるなどして前向きに取り組んだ。今ではダンス動画や笑顔写真を共有しながら、親睦を深めている。

東京ガールズと合同パフォーマンス
東京ガールズと合同パフォーマンス

活動の一環で、特別養護老人ホームのイベントに参加した際、柳下さんはメンバーを頼もしく感じたという。「チアは、一緒に声を出したり参加してもらうコミュニケーションスポーツ。だからこそ、シニアの方が参加型イベントで体の不自由な方に、一緒に手遊びをしたり、教えている姿が、たくましく、かっこよく見えました」。

さらに「皆さん、すてきなチアリーダーになってきたので、シニアチアダンスをもっと広めていきたいです。元気になっていく皆さんの姿を見ていると、チアの素晴らしさと可能性を感じます。そして、自分の笑顔が掛け算になって、自分に返ってくる。いくつになっても、夢は作ってかなえられる。今後の目標はNBAのコートに立ち、コートからの景色を皆さんと共に共有することです」と目標を語った。

B2東京エクセレンスの試合でパフォーマンス
B2東京エクセレンスの試合でパフォーマンス

◆Shibuya Iris(渋谷アイリス)18年発足。拠点は渋谷区。メンバーは65~84歳まで32人。月4回、1回75分の練習を行っている。4月からは月8回のオンラインレッスンを実施。社会福祉法人カメリア会、社会福祉法人奉優会の支援の下、「渋谷区つばめの里・本町東」と「渋谷区ひがし健康プラザ」で練習を行う。チーム名は、渋谷区の「区の花」であるハナショウブ(Iris)に由来。「自分も仲間も元気になる、そしてその元気を皆さまにもお届けする」を目標に活動。