東京オリンピックの競泳は7月24日から始まる。日本代表としてオリンピック2大会に出場した伊藤華英さんに競泳の見どころを解説してもらった。


東京オリンピック競泳の見どころを話す伊藤華英さん
東京オリンピック競泳の見どころを話す伊藤華英さん

-今大会で最も注目する選手は

伊藤 男子200メートル自由形の松元克央ですね。日本人がこの種目でメダルを取ったら初の快挙です。その力は十分にあると思います。彼は実際会ってみると想像以上に大きくて(186センチ)体格的には海外選手にも引けを取らない。「カツオ」って覚えやすいあだ名があるのもいいですね。指導するのは私もお世話になった鈴木陽二コーチなんですが、本人は70歳を過ぎた鈴木コーチにメダルをかけてあげたい、と泣かせることを言っています。昨年から計画的なトレーニングで調整してきたので、予選から決勝まで3レースを乗り切るスタミナもついているはず。すごく期待しています。


男子200メートル自由形に出場する松元克央
男子200メートル自由形に出場する松元克央

-今回は初出場の選手が多い

伊藤 33人中22人が初めてのオリンピックです。普段より多いですね。メダル候補といわれる松元、大橋悠依、佐藤翔馬らも初めて。それだけに、チームとしては複数回出場している選手が引っ張っていくことが必要です。3回目の渡部香生子や2大会連続の長谷川涼香らの役割も大事になってきますね。オリンピックは国内大会とはいろんなことが違ってきます。更衣室から招集所、名前を呼ばれるところまで、慣れないことが続くはず。経験がないのは仕方ないですが、大事なのは何があっても動揺しないことです。


-大会のカギを握るレースは

伊藤 最初にメダルが決まる男女の400メートル個人メドレーは大事ですね。チームの勢いがつきますから。日本の命運を握っているといってもいいくらい。男子の瀬戸大也、女子の大橋は代表の中でも中心的存在ですから、ぜひ頑張ってほしい。


男子400メートル個人メドレーなどに出場する瀬戸大也
男子400メートル個人メドレーなどに出場する瀬戸大也

-決勝が午前中という変則スケジュール

伊藤 私も北京オリンピックで経験したんですが、正直やりにくい。体の動きやすい午後に予選を泳いで、動きにくい午前に決勝。タイムから自分の体調もつかみづらいですね。しかも1種目で2度、日付が変わる。たとえば男子200メートル自由形は25日夜予選、26日午前準決勝、27日午前決勝です。緊張する夜を過ごすのはなるべく少なくしたいのが心情。気持ちがタフじゃないと勝てない。1日をどう過ごすかシミュレーションが、かなり影響してきますね。


-リオ大会の萩野と瀬戸のように2人同時の表彰台は

伊藤 男子200メートル平泳ぎに可能性があります。佐藤翔馬が注目されていますが、武良竜也も実力はメダル級。150メートルまで先頭争いにくらいついていければ、と期待しています。それと200メートルバタフライ。瀬戸と本多灯ですね。本多は持ち前のハイテンションで勢いをつけていってもらいたいです。



男子200メートル平泳ぎに出場する佐藤翔馬(左)と武良竜也
男子200メートル平泳ぎに出場する佐藤翔馬(左)と武良竜也

-大会前から注目されている池江は

伊藤 今回はリレーに専念します。400メートルリレーも第1泳者でなければ個人記録は残りません。本人が個人種目出場を希望すれば出られたかもしれませんが、世界のレベルをよく知っている彼女ですから、今の自分の実力を考えて決断したのでは。3年後のパリ大会が勝負、と思っているのではないでしょうか。


-選手にメッセージを

伊藤 いろんな意味で特別なオリンピックですから、みんなそれぞれの思いをもって臨むでしょう。最終的には自分の中で「いいオリンピックだった」と思える泳ぎをしてほしい。結果は大事ですが、それだけじゃない。アスリートとして、一人の人間として納得できる大会にしてほしいですね。