東京五輪・パラリンピックの迷走が止まらない。辞任した組織委員会の森会長から後任指名された川淵三郎氏が一転して辞退した。反対を押し切ってJリーグ創設に導き、分裂していたバスケットボール界を一つにまとめてBリーグを立ち上げた立役者。実績と手腕は申し分なかったが、世論は甘くはなかった。

問題はその後継指名の過程にある。内外から批判を浴びている問題の当事者が自ら根回しに動き、懇意の川淵氏にお願いした。理事会での議論もなく、前任者の強い意向で後任が決められる。川淵氏の強いリーダーシップに期待する声もある一方で、衰えぬ森氏の威光と、いかにも政治的なその手口に、批判の声が上がっていた。

森会長の辞任は女性蔑視発言が発端だったが、国民の怒りは首相経験者の権力が支配する旧態依然とした構図にも向けられた。発言は五輪開催国のトップとして許されるものではない。しかし、JOCの評議員会で失言をとがめる声は出ず、首相や閣僚からも進退を問う声は出なかった。会長交代で国民が期待したのは、そんな日本社会特有の構造と意識の転換。そこを初手で見誤った。

この状況を考えると後任は森氏の息のかかった政治家やスポーツ関係者では世論が納得しないだろう。「女性差別のない国」をメッセージとして世界に発信する必要もある。過去の実績や手腕も重要かもしれないが、今、この難局を打開するにはやはり女性が適任だと思う。「女性には荷が重い」といった男社会特有の古い先入観も取り去ることができるし、日本社会の古い意識を変えるきっかけにもなるはずだ。

女子マラソン五輪メダリストでIOC女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞した有森裕子さんや、パラリンピックのアルペンスキー金メダリストで18年平昌大会の日本選手団長を務めた大日方邦子さんら、実行力と国際的な知名度のある人材はいる。開催準備などの実務面はこれまで通り、組織委の武藤事務総長が統率すればいい。そして川淵氏には組織委の評議員として、スポーツ界の改革を断行してきた経験を生かして、新会長をサポートしてほしい。【首藤正徳】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「スポーツ百景」)

12日、自宅を出る川淵三郎氏(撮影・平山連)
12日、自宅を出る川淵三郎氏(撮影・平山連)