暑い。とにかく暑い。ついに東京でも観測史上最高の40度超えを記録、気象庁が「災害」認定するほどの暑さだ。「外出は控えて」の注意喚起のそばから、チケット発売イベントで「五輪(オリンピック)は競技場で生観戦を」と言われても、ブラックジョークにしか聞こえない。
13年9月、東京招致が決まった時から「大丈夫か」という不安はあった。64年東京大会は10月10日開幕だが、今回は秋開催の選択肢はなかった。梅雨と台風の間で「比較的天候が安定する」この時期になった。
年々厳しくなる暑さに、不安は増す。「選手は大丈夫?」という声も当然だ。暑さでパフォーマンスは確実に落ちる。「全員が自己ベスト」の大会ビジョンも絵空事になる。ただ、選手はより悪条件で戦うこともある。万全の暑さ対策をとるだろうし、サポート体制も充実している。競技レベルは落ちるが、条件は全選手に公平。不謹慎を覚悟でいえば、蒸し暑さに不慣れな外国勢がパフォーマンスを落とし、日本選手に追い風になるかもしれない。
本当に心配なのは観客。屋内競技は冷房があるが、屋外競技は暑さの直撃を食らう。さらに、競技場前の入場ゲートも苦行。セキュリティのためにチケットや持ち物などを検査するゲート。自らの意志で動けるならいいが、意志とは無関係に行列は続く。猛暑の中、ひたすら「待つ」だけだ。
もちろん、大会側も対応する。マラソンコースなど合計136キロの道路に特殊塗装をし、路面温度上昇を8~10度おさえる。入場待ちの行列にテントで日陰をつくり、大型冷風機を設置する。ミストを噴出する装置を設ける。数々の施策を用意する。昔ながらの「打ち水」を奨励するなど、組織委員会と都が連携して対策に取り組んでいる。
組織委員会の森喜朗会長は、日刊スポーツのインタビュー(25日付け東京大会紙面参照)で連日の猛暑に触れて「大変な事態で一般の人には怒られるかもしれないが、組織委員会にとっては天祐だと思っている」と話した。「天祐」とは、天からの幸運。被害を気にかけながらも、あえて「天祐」という言葉を使った。
猛暑対策は1年中考えられているが、実際の効果は実証実験でないと分からない。人工的に作られた暑さでは、人間の「体感」と微妙に違うからだ。この猛暑は「予行演習」としてはいいタイミングだった。「想像ではなく、厳しい現実を見て準備をしないといけない」と森会長は話した。
観客の意識も変わる。暑さ対策を覚える。「無理しない」「水分をとる」「体を冷やす」と、個々が当たり前の対策をとるようになる。仮に2年後にいきなりこの暑さがきたら、取り返しのつかない事態になっていた。そういう意味で「天祐」なのかもしれない。
ただ「暑い」「暑い」だけでなく、暑さの中で五輪をどう迎えるか。どうすれば猛暑を克服できるか。大会に向けて、まだまだ課題は多い。2年という時間は、あっという間に過ぎる。
◆荻島弘一 東京都出身、57歳。84年に入社し、整理部を経てスポーツ部勤務。サッカー、五輪などを担当し、96年からデスク。出版社編集長を経て、05年から編集委員として現場取材に戻る。




