【ソウル3日】フィギュアスケート男子の全日本ジュニア王者、鍵山優真(16=星槎国際高横浜1年)が4大陸選手権(韓国、6日開幕)に初出場する。

五輪2大会出場の正和コーチ(48)を父に持ち、1月の冬季ユース五輪で金メダルに輝いた新鋭。当地へ入る前に日刊スポーツのインタビューに応じ、主要国際大会ではシニア初となる挑戦への抱負を語った。女子で連覇を狙う紀平梨花(17=関大KFSC)らシングル代表は羽生以外は到着した。

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近未来のスター候補、鍵山のシニア本格デビューが迫ってきた。旗手の大役も任されたスイス・ローザンヌ冬季ユース五輪で金。帰国翌日から氷に乗り「練習しないと焦ってしまうんです、ほかの人が練習していると思うと。なので完全休日はないです」と目を細めた。学業も再開。団体戦の銀メダルも手に登校し「学校で取材を受けるのは初めてですね」と照れながらスケートへの思いを語った。

ユース五輪はショートプログラム(SP)で壁に激突転倒のアクシデントも、フリーで海外自己ベストの166・41点をマーク。3位から逆転優勝し、キスアンドクライで喜びすぎる姿が話題になった。「一生に1度の大会で、どうしても優勝したくて」と笑いつつ「フィギュアだけの大会ではないので、ショートトラック用の防護マットの分だけ狭くなっていて。ぶつかっちゃいましたけど、五輪の雰囲気を味わえたのは良かった。本番の想定になって22年の北京に出たくなりました」と夢が膨らんだ。

その前に一躍、脚光を浴びたのが昨年の全日本選手権。SP7位も、フリーで4回転トーループとトリプルアクセル(3回転半)を2本ずつ着氷した。フリーに限れば、過密日程の疲労で本調子に遠かった羽生結弦を上回る2位(180・58点)。全体では、SPで国際スケート連盟(ISU)非公認ながら世界最高得点を出していた羽生にさすがに及ばなかったものの、3位(計257・99点)で4大陸の出場権を得た。本田武史氏以来23年ぶりの高校1年での表彰台に、尊敬する羽生や宇野昌磨と立ち「『おめでとう』と言っていただきましたが、その後の会見も含め、すごく緊張しました」。シニアで戦っていく手応えをつかんだ。

天賦の才は父の正和コーチから受け継いだ。92年アルベールビル、94年リレハンメル五輪代表。94年の世界選手権(幕張)では6種7本の3回転ジャンプを決めて6位に食い込み、引退に花を添えた。「膝の柔らかさは父譲りと言われます」というセンスを武器に、まだ中学3年だった昨年3月に4回転トーループに成功。初練習から、わずか3週間だった。「スピードや体の締め方など父の教えもあったんですが、自分の感覚で。無心で跳べる。技の習得の早さには自信があります」。You Tubeで羽生の4回転を研究してきたが、衝撃を受けたのが全日本の前だ。イタリア・トリノで行われた昨年12月のジュニア・グランプリファイナル。自らはミスが出て4位に終わったが、シニアの公式練習を見学して失意を忘れた。目の前には羽生がクワッドアクセル(4回転半)に挑む姿。世界で誰も成功していない大技に「挑戦って大切なんだなと思わされました。すごく負けず嫌いが伝わってきて、だから強いんだと。動画では見ていたけど、カメラが切り替わって分かりづらい部分もある。生で見たら全く違った。遠くからでも存在が大きく見えたり、速かったり、きれいだったり」。4大陸で「また間近で経験できるので吸収できれば」と今から胸が躍る。

乗り込んだ韓国では、全日本と同じくSPで4回転1本、フリーで2本の構成にする予定。「本気で北京五輪を狙いたいですけど、その前に4大陸でどれだけ戦えるのか知りたい。上位というよりノーミスで。次の目標は、今のトップ選手の皆さんと肩を並べて戦えるレベルまで成長すること」。シニアの主要国際大会初陣、次代のエースの節目は見逃せない。【木下淳】

◆鍵山優真(かぎやま・ゆうま)2003年(平15)5月5日、長野・軽井沢町生まれ。5歳でスケートを始め、中学から横浜市で練習。ジュニアは18年8月のアジア杯で国際大会初出場初優勝。国内は昨年11月の全日本ジュニアが初タイトル。ライバルで親友の佐藤駿(埼玉栄高1年)を破った。シニアは19年2月のチャレンジ杯(オランダ・ハーグ)で2位も「B級」大会のため今回の4大陸が主要大会デビュー。3位だった全日本では将来、91~93年に3連覇した父正和コーチ以来の優勝も目指している。158センチ、51キロ。血液型O。