3年ぶり5度目の優勝が懸かる世界王者の宇野昌磨(25=トヨタ自動車)が首位発進した。

前日までの練習から調子が落ちた状況下で100・45点を記録。2位の島田高志郎(木下グループ)に12・76点の大差をつけ、12度目の出場となった豊富な経験を生かした。

故障明けで今季初戦となった北京五輪銀メダルの鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)は81・39点で6位。世界選手権(23年3月、さいたまスーパーアリーナ)の切符もかけた勝負のフリーは25日に行われる。

    ◇   ◇   ◇

決めポーズをほどき、宇野はリンクサイドで腰を抜かしたランビエル・コーチに謝った。最終盤、最高のレベル4を目指したスピンで「しっかり(回転)数も数えたけれど、途中で間違えた」と取りこぼしに苦笑い。それでも国際スケート連盟(ISU)非公認ながら、今季初の100点台に乗せた。演技後は普段とひと味違う充実感があった。

「『今日の最大限はできたのかな?』と思います。練習してきたものと違う感触。焦るのではなく、今、どうしたらいいのかを短時間でコントロールできた」

17日に25歳となり、シニア8季目を迎えている。本番約10時間前、午前9時55分からの公式練習で手応えが得られなかった。練習は黒のジャケットの衣装。だが、本番はこれまで着用してきたものに替えた。ジャンプは「そうでないと失敗する」とあえてスピードを落とし、得点源の4回転フリップから、4回転-2回転の連続トーループ、トリプルアクセル(3回転半)の3本全てで加点を得た。

「朝は体が動かないのか、氷の感触が違ったのか、コスチュームが動きにくかったのか。複数の理由があると何が原因か分からないので、選択肢を1つつぶした。(演技直前の)6分間練習で『衣装じゃないんだな』と分かった。一番リラックスした方法を模索した結果が、あの演技でした」

初めて日本一をつかんだのは6年前、同じリンクだった。時に周囲がケガを心配し「やめなさい」と止めるほどの練習を繰り返し、土台を築いているところだった。今はこう言い切る。

「自信をつける、つけないというところに、僕はもういない。(ジャンプの際に)スピードを落としたことでボロボロの演技だったとしても『スピードを出せば良かった』とは思わない。試合は練習でどれだけ100%跳べていても失敗する場。自分が成長するには、どんな選択をすべきか。真剣に試合と向き合えばそれ(答え)はついてくる」

自身と対話し、考え抜いた末に至った判断。得点発表を待つ「キス・アンド・クライ」に貼られた抱負には「ブラボー」と書いた。

「みんな『自分に勝つ』とか当たり障りのないものを(書く)。サッカーファンになったので。僕、めっちゃW杯見たんですよ」

実直さと自然体の融合。それが25歳の現在地だ。【松本航】